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2008年12月10日 (水)

カブでお遍路17

カブでお遍路17
宿では歩きのお遍路三人と一緒になった。一人は75才くらいの男性。残る二人は50才代の御夫婦だ。夕飯を共にしながら、一日何キロ歩けるかという話が始まった。75才の方は20kmがいいところだとおっしゃったが、御夫婦のほうは30kmはいけるとおっしゃる。こちらはエンジンつきの乗り物で移動している身なので大きなことは言えないが、日本史上に残る軍隊の高速移動の記録を持ち出してケムに捲いた。歴史上名高い水攻めで清水宗晴を討ち取った豊臣秀吉の軍勢が、近くまで毛利の本隊が迫っていること、さらに織田信長が本能寺の変で倒れたことを知って撤収した際には、一日で赤穂の近辺まで後退している。マラソンでもそうで、抜くときには相手に「とうてい追いつけない」と思わせる程のスピードで抜け、という鉄則がある。でないと、また追いつかれるからだ。一流のマラソン選手が30km地点でスパートをかける時には100mを13秒台で駈けぬけていると聞く。一時間半以上走った時点でなおそのスピードを出せる脚力には仰天するしかない。因に秀吉の軍勢は直線距離でも60kmを、軍隊の装備を持ちながらも駈けぬけたことになる。昔の人は凄かったという話をする訳ではないが、驚異的な脚力なのである。 
部屋に戻ってテレビで明日の天気を確認。愛媛県下全域、雨と強風という予報が出た。素晴らしい。ここまで来た以上、その悪条件を素直に受け入れて、そのまっただ中に突っ込んでいくしかないではないか。翌朝、出発前に岬と金剛福寺へ行った。岬の公園にはジョン万次郎の巨大な銅像が立っていた。ジョン万次郎はこの近くの宇佐の港を出て嵐に遭遇、鳥島に漂着して数カ月を暮らす内、アメリカの捕鯨船に発見されて救助された。彼に関して興味ある事実が書いてある本が最近出版されている。「The great wave -gilded age misfits,japanese eccentrics,and the opening of old Japan」 Christpher Benfey Random House 邦訳も出ている。「白鯨」の著者のメルヴィルがナンタケットの港を出港したのと、ジョン万次郎が宇佐の港を出たのは2日しか違わないとか、大平洋上で二人の乗った船はすれ違っているはずだとか、実に面白い。
 金剛福寺は立派なお寺だった。岬が観光地なのでお参りも多いのだろう。しかしそれよりも感動したのは一帯の山々の原生林の様子だ。人の入り込む余地がないほど繁茂している。まさに手つかずの原生林という奴だ。海の方を眺める人ばかりで、陸地側を観察する人は少ないだろうから、殆どの人は気づかずに帰ってしまうのだろうが。
足摺岬から宇和島までは曇りだったが、龍光寺あたりではついにみぞれ混じりの雨が降りだした。コンビニの駐車場で合羽を着る。前の道路を行き交う車の中からは、「この寒い中を酔狂に」といった憐れみの視線が投げかけられているのだろう。このあたりは懐かしい所だ。1971年にカワサキC2TRというリヤスプロケットを2枚有した奇妙な125ccで走ったことがある。その後にも九州からの帰りに大洲に泊まったことがある。その時はヤマハの名車DT1。ホンダCB500で四国一周をしたのは75年頃。3日間雨に降られっぱなしだったが、大洲の同じ宿に泊まった記憶がある。
 その頃の自分と今の自分を比べてみると、多少歳はとったが、バイクで旅をしているということでは、まったく変わってない。しかし、街道の風情はずいぶんと変わってしまった。通り過ぎる町々を迂回するバイパスが整備されたために、町なかを通るということがない。さまざまな町や村で暮らす人々の暮らしや息吹きといったものに触れることなく車は移動していく。そしてバイパス沿いに連なるのは全国どこにでもあるチェーン店と決まっている。飲食、外食産業ではマクドナルド、モスバーガー、ココス、ジョイフル。スーパーのジャスコ、マルナカ。ホームセンターのダイキ。車関連ではオートバックスといった名前があげられるだろう。その土地その土地の地域に根ざした店は殆ど見当たらない。
 これが文化の破壊以外の何ものであろうか。戦後永らく駐日アメリカ大使を勤めたライシャワー氏が新聞記者に「戦後ずいぶんと日本はアメリカナイズされたと思いますが」と水を向けられて、「アメリカナイズじゃなくてモダナイズと言ってほしい」と答えていたことを思い出す。日本じゅうの伝統文化を破壊しまくってなにがモダナイズだ。自動車で街道を走るたびに悲しくなるのは私だけではあるまい。

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コメント

高知県の西部はいつか、回ってみたいところです。
この空の色、すごく素敵ですね。

そうなんです。黒いシルエットの中にポッコリとび出ているのはジョン万次郎の巨大な銅像です。偏西風    

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