備中.倉敷あんこめぐり

成羽に金平饅頭という菓子があるということを知ったのは20年程前のことだった。そのあたりの出身であった友人(故人)が帰省した時に土産として持ってきてくれたのが、それを食べた最初だった。薄い生地の中にたっぷりの白の漉し餡が詰まっている。たったそれだけのどこにでもありそうな饅頭なのだが、餡と皮のバランスが絶妙だ。友人がいなくなってから、時折思い出しては成羽まで車を走らせるようになってしまった。
今回の脚はメルセデスE320。友人の好意に甘えて使わせてもらえることになった。現行型より一つ前のW124
型である。私の車から乗り換えてまず思ったことは、静かだということ。これはあたりまえ。私の車が4台買える値段なのだから。悪路を走っても嫌な振動は伝わってこない。高速道路に乗り入れても全く安定した挙動を示す。VWのような車のほうから無理やり強制されているような直進性ではないものを見せてくれる。このあたりはFFとFRの駆動方式の違いによるものだろうか。正直言って、岡山道あたりで遅い流れに乗って走っているだけでは、その良さは体感できなかった。山陽道に乗り入れて法定速度の1.5倍以上で走って初めてその真価を発揮する車なのだろうと思った。そしてその時に効いているのは日独の金属加工の精度の違いのはずだ。要するに脚回りにガタが無い。こう言うと、日本でもそれくらいの加工は出来るよ、と言う人が必ず出てくる。それは確かに出来る。だがしないのだ。そこで出てくるメーカー側の言葉はいつも決まって「お客様はそこまで求められていませんから」というものだ。確かに日本人が「走る、曲る、止まる」という自動車の基本性能よりもオモチャっぽい仕掛けや内装の豪華さを求める民族であることは明らかであるが。
三宅製菓はまったく今っぽくない作りだ。ロの字の型地に硝子ケースが並んでおり、その中に店員が居て、客の応対もし、客の買い求めた品を包んでくれる。その店員がまた、この上ない程無愛想なのだ。まあそれ以上のものを求めてみてもしかたがないし、おいしければいいのだろう。主力商品は金平饅頭と神楽最中。最中は進物用として買うのなら、少々値段は高いが面神楽最中をお勧めする。皮が神楽の面の型になっているからだ。だいたい、わが県内にはユニークな型の最中が多い。カブトガニ型や天文台型はその際たるものだろう。どれも田舎らしく、あんこたっぷりなのが好ましい。
最中に関しては、私は言いたいことがある。このところ流行している、皮と餡を別々に包装して客に組み立てさせる式のものを問題にしたいのだ。あれは和菓子の伝統を冒涜するものでしかないと私は思っている。わが国は高温多湿の国。皮と餡の全体がしっとりと馴染んでないといけない。どうしてこんな変な最中が登場してきたかというと、その背景には社会全体の甘味離れがある。消費者の嗜好の変化におもねて菓子屋が砂糖の使用量を減らす。すると餡から水分が流れ出す。皮が湿気るのを嫌って考え出された苦肉の策が餡と皮を分けるという方法だったのだ。世の中、趣味のいい人や伝統文化に理解のある人ばかりではないから、こういった邪道の菓子も支持されるようになってきている。嘆かわしいことではあるが。
それはさて置き、買い物の最中に売り場に設置してあるテーブルの上にパンフレットが積まれているのが目にとまった。そのタイトルが変わっている。「倉敷、備中あんこめぐり」というものが。副題は「あんこでつなぐ、ふるさとの味」。続く。


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