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2008年9月27日 (土)

奥出雲ワイナリー

 「食」の安全が脅かされている。産地偽装、日付改竄、危険物質混入と枚挙に暇がない。まさに「何でもあり」の様相を呈してきている。このあとまだどんな問題が噴出してくるか誰にもわからない。これでは食品の製造、流通に関係する者すべてが、全国民から疑われているような状況になっていると言っても過言ではないだろう。
 こういった問題が発生する原因はどこにあるのか。私は世間一般ではあまり論議されない点を原因として挙げたい。それはひとつには日本人の「食」に対する異常なまでの潔癖症である。こういうことを言うと、潔癖症のどこが悪いのだと反論されそうな気がする。新鮮なもの、安全なものを求めようとする心根が「食」の安全を増進こそすれ、それを阻害することはない、というのが通念だろう。ところが食品の生産や流通に関わる人間から言わせると、これはかなり厄介な問題なのである。たとえばバターケーキの場合、焼いて2、3ケ月大丈夫なものもある。しかし賞味期限を3ケ月先にすると誰も買わないのだ。そこで賞味期限を1ケ月先にしておいて、張り替える。この件で摘発された業者が実際にいるが、私は気の毒でしかたがない。
 なにしろ日本人は世界に冠たる割り箸を使う民族だ。これほどわが国民の潔癖症を指し示す事例はないだろう。スーパーの棚の奥からできるだけ日付けの先の牛乳を引っ張り出す。ヨーグルトやインスタントコーヒーの
封印の紙を半分だけ剥がして、全部は取り去らない。産地のブランド化にも熱心だ。讃岐うどん、札幌ラーメンに始まって、関サバ、魚沼産コシヒカリ、岩手県産白金豚。最近ではイベリコ豚なんていうものまで現れた。
 こういうことを異常事態と考えない、また食品偽装の遠因になっていると気がつかないということにこそ問題があると私は考える。
 産地についても、各食品にブランドがあり、フルーツトマトなら高知の奥谷地区の何々さんの育てたもので、棚の何段目のものという指定まであるのだから驚く。メロンの生産は手が込んでいる。土はよそから運んできたものを使い、しかも何年かに一回はすべて入れ換える。単一品種の連作による弊害を防ぐためだ。農薬や化学肥料の使いまくりで、まるで宝石であるかのように手塩にかけて育てる。その手のかけようがいかに凄いかを示す逸話がある。ある品評会で審査員がこう言ったというのだ。「鈴木さんちは何かあったかなあ」マスクメロンの網のかかり方が去年までと違うのを見とがめたのだ。傍から他の審査員が「お嫁さんの体調が悪いらしいですよ」「そうか」。しかし、これ程までに手をかけて育て、高価に取引きされるマスクメロンが本場イランで粗放的な育て方をしたものに味でかなわないというのだから皮肉な話ではないか。日付けの先の牛乳を求めてスーパーのトラックが深夜の乳業メーカーの駐車場に集結する。その圧力に堪えかねた工場長は0時以前から日付け表示を換えてしまう。どうせ同じ魚なのだからと、対岸の八幡浜に揚がった魚までが関サバとして流通してしまう。一度確定したブランド食品以外を認めず、単一の食品に群がるという集中豪雨的な消費者行動はもうやめなければいけない時期に来ている。世界中に飢えに苦しむ人がいることを忘れてはいけない。
 本当に日本人は産地や鮮度にこだわり、そのこだわりに適ったものを食しているのか。私はそうではないと考えている。バーチャルのブランド食品が一人歩きしているだけだ。とれとれ魚や朝摘み苺とスーパーのポップはウソだらけだ。「誰かうまい嘘のつける人を探すのよ〜」歌謡曲の歌詞ではないのだ。「嘘でもいいから、体にいい物を食べている実感に浸らせて欲しい」という消費者側の騙され願望と「ゼニのとれる商品を作れ」という生産者側の不毛な努力のはざまに発生したのが一連の食品関連の事件ではなかっただろうか。
 少しでもまともな「食」への関わりをしている生産者はいないのかという思いを私は常に抱いている。いたずらに企業規模を拡げず、製品の品質で大メーカーと勝負する。こういった活動を地道に進めている食品メーカーも数は少ないが、日本各地に存在する。秋の一日、山陰へそうした企業理念で運営されている食品関連企業を訪ねるドライブをする機会があった。行く先は島根県木次町。ここには奥出雲ワイナリーと木次乳業という二つの施設がある。奥出雲ワイナリーは最近とみに名声があがってきている。わが国のワイン生産農家は東日本に集中しているが、西日本にも僅かながら点在している。ここもそんな中の一軒である。かたや木次乳業は良質な牛乳とチーズの生産をするメーカーとして評価が高い。
 こんな二つの食品メーカーが山陰の過疎地帯に何故存在し得ているのかというところに以前から興味があった。しかし訪問の機会はなかなか訪れなかった。奥出雲ワイナリーと私の店の定休日が同じということもあったし、自動車で行くと飲めないという関門が存在したのだった。しかしこの度やっと実現の運びとなった。店を木曜日に休めたのと、お酒を飲まない友人が運転手を務めてくれることになったからだ。続く。

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コメント

プロボローネ
美味かったです!
ごちそうさまでした・・・

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